はじめに・おすすめの絵本5冊
6年生の皆さん、6年生のお子さんを持つ皆さん、小学校ご卒業おめでとうございます。
6年間の思い出を振り返り、新しい生活に思いをはせる。3月は、暖かくて、本当にいい季節ですね。
小学校では身近にあった「読み聞かせ」や「絵本」という存在も、中学校にいくと途端に離れてしまったり、手に取りがたくなってしまうことが多いです。
個人的には絵本はいくつになってもいいものだと思っていますが、中学生になると、周りの目も気になって、絵本に触れにくくなることが多い気がします。
中学校入学前、最後の「小学生」である今、お家で、家族で、小学生最後の読み聞かせはいかがでしょうか。
私は、小学生最後の読み聞かせに次の5冊をおすすめします。
・島田洋七,はたこうしろう『毎日楽しくてしょうがなか!がばいばあちゃんが教えてくれたこと』徳間書店,2015年1月
・ヨシタケシンスケ『にげてさがして』赤ちゃんとママ社,2021年2月
・林木林,庄野ナホコ『二番目の悪者』小さい書房,2014年11月
・海老 克哉,オオシカケンイチ『チコちゃんに叱られる おとうさんおかあさんといっしょにすごせるじかんはどれくらい?』文溪堂,2019年11月
・ジョン・J・ミュース,三木卓『パンダのシズカくん』フレーベル館,2007年3月
学校司書だった頃、悩みぬいた珠玉の5冊です。小学生最後の読み聞かせの思い出にいかがでしょうか。なぜ、この5冊がおすすめなのか、私自身の経験や想いを下記に載せました。理由にも興味を持っていただけた方はどうぞ続きもお読みください。
小学校最後の読み聞かせにどんな本を送りたいのか
小学校の図書館司書をしていたころ、3月に私がいつも頭を悩ませていたのは、
「小学校最後の読み聞かせに何を選ぶか」ということでした。
ただでさえ、6年生の読み聞かせにはいつも頭を悩ませます。6年間も読み聞かせを聞き続けているため、常に新しいものを探さなくてはならなかったり、6年生にも聞きごたえのある話を探したりと読み聞かせの悩みは尽きません。私は全校全クラスに毎週読み聞かせをしていたので、この頃になるとネタも底が見えてきます。時々何を読むか決まらないまま翌週を迎えたときなどは、常に冷や汗をかいていました。
それでも、小学校最後の読み聞かせは、しっかりと思いを込めて読みたい、そう思い、読み聞かせの絵本を決めてきました。
では、どんな思いを込めたいのか。考えた結果、私は3つのことが頭に浮かびました。
1つ目は、「中学校への希望とともにある不安を少しでも和らげたい」ということです。
小学校最後の季節になると、子どもたちの顔がどんどん明るくなってくる印象を受けます。卒業式というゴールに向かって、授業もまとめが多くなり、卒業式の練習も進んでいきます。ゴールがみえるということは、やはりうれしいことだと思います。
その反面、中学校でうまくやっていけるか、不安になる季節でもあります。ゴールに向かう活動の忙しさも増してくる時期なので、卒業への喜びで忘れがちですが、身体は少し疲れていることも多いです。私自身も、小学校最後の時期は、楽しいはずなのに、無意識に先の見えない状況に不安も感じ、学校では元気でも、家では少しぐったりと寝ていることが多かったように思います。実際、「卒業式も近いのに子どもが家では寝てばかりで心配。中学生になるのにこれでいいのか」という心配の声もよく聞きます。この疲れと漠然とした不安が、そうさせているのかもしれません。
それならば、この不安を少しでも和らげたいそう思って読み聞かせの絵本を探しました。それが、
・島田洋七,はたこうしろう『毎日楽しくてしょうがなか!がばいばあちゃんが教えてくれたこと』徳間書店,2015年1月
・ヨシタケシンスケ『にげてさがして』赤ちゃんとママ社,2021年2月
・ジョン・J・ミュース,三木卓『パンダのシズカくん』フレーベル館,2007年3月
の3冊です。
中学校への生活を考えるとき、きっと「うまくできるかな」と考えてしまうことが多いと思います。
友達とうまくやれるかな、授業にもちゃんとついていけるかな、部活もしっかりできるかな。
正直に言ってしまうと、最初からうまくできる人は誰もいません。でも、学校は○×をつけなければならないことが多い場。どうしても最初から「うまくやろう」「うまくやらなきゃ」と思ってしまいやすいところです。そのため、少しうまくいかないと落ち込んでしまうことも多いはず。でも、やっぱり、「最初からうまく」なんてハードルが高すぎます。だんだんやっていくうちにうまくいくのです。最初からうまくやっているように見える人も同じ。みんな少しずつ進んでいます。
だから、ちょっとくらい失敗しても大丈夫!そんなに悩まなくていいんだよ。できないことなんてあって当たり前!と、不安なことも、一緒に笑い飛ばしてくれる『毎日楽しくてしょうがなか!がばいばあちゃんが教えてくれたこと』
うまくいかないときは、ときには逃げたっていい。逃げることは、自分の他の道を探すことでもある。逃げて逃げて逃げて、自分を認めてくれる場所を探そうとエールをくれる、『にげてさがして』
もしも〇〇だったらと不安がってもきりがないよ!教えてくれる『パンダのシズカくん』
を卒業前に読もうと決め、よく読んでいました。
2つ目の読み聞かせに込めた想いは、「常に『今』が大事」ということです。
卒業したら○○をする、入学したら〇〇するなど、未来を考えることはとても楽しいことです。
でも、小学生最後の今もとっても大切。やりたいことは先延ばしにせず、いつでも「今」を楽しんでほしいなと思い、読み聞かせに選んだのが、
・海老 克哉,オオシカケンイチ『チコちゃんに叱られる おとうさんおかあさんといっしょにすごせるじかんはどれくらい?』文溪堂,2019年11月
・ジョン・J・ミュース,三木卓『パンダのシズカくん』フレーベル館,2007年3月
の2冊です。
中学校に入り、部活やテスト勉強なども始まると、家族との時間は今よりぐっと減りがちです。
『チコちゃんに叱られる おとうさんおかあさんといっしょにすごせるじかんはどれくらい?』
では、具体的に一生のうち家族といられる時間はどれくらいなのか示してくれているのですが、数で表すと、本当に短く感じます。もちろん、忙しくなることは、自立という意味でも大切なこと。
でも、いつもそばで支えてくれる家族との時間の大切さを、卒業を機に見つめ直してみるのもいいのではないでしょうか。
また、禅のお話が3つ入っている『パンダのシズカくん』の3つ目のお話も、今を大切にする気持ちを優しく教えてくれます。
最後に込めた想いは、「うわさに惑わされず、自分でみたものを信じてほしい」ということです。
中学校に行くと、他の小学校から来た人ともたくさん触れあうようになります。
楽しみな反面、入学前後は「あの人はこういう人だよ…」「中学校はこんなところだよ…」という噂も、善意悪意関係なく身の回りにに溢れやすくなります。
また、スマホを持つ子も増え、噂話はより遠くまで飛んでいきやすくなる時期。
そんなときに、本当にその話は信じていい?自分の目で確かめようとささやいてくれる『二番目の悪者』。
ちょっとゾクッとする、決して他人事にできない、大切なこのおはなしも、中学入学前に送りたいと思い、読んでいました。
まとめ
・中学校に行くことを不安がらなくていい
・常に「今」が大切
・自分の目で見たものを信じる
この3つを伝えてくれる5冊を、小学生最後の読み聞かせに読んでいました。
中学生になると、絵本を読み聞かせてもらう機会は激減するかもしれません。
小学生最後の今、ぜひ家族で読み聞かせの時間を取ってみるのはいかがでしょうか。
少しでも多くの人へ、素敵な絵本の橋渡しができたらうれしいです。
ご卒業、本当におめでとうございます。
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